フォーラム活動報告
Musicman-NET SPECIAL REPORT & INTERVIEW
レコーディング三者協議会(ref) 設立記念座談会 2/4page


●大野さんはミュージシャンとクライアントの間に立つ立場ですので、ご苦労も多いと思います。

大野:苦労で言えば、いかに費用を安く抑えるかです。クライアントから「もっと安くならないか」と言われることが圧倒的に多いですね。ただ、安かろう、悪かろうではプロフェッショナルとしてはだめだと思うんです。先ほど配信の話が出ましたが、作品という観点から見ると、昔はアルバムの中から自分のお気に入りの曲を見つけて聴いていたと思うんですけど、今は売り手側が「この一曲聞いてくれ」と出しているので聴く側もそれしか選択肢がないんですよ。今やもうアルバムといった観念がなくなってしまったのかもしれないですね。

●アルバムという概念はすでに微妙なところですね。「いかに費用を安く抑えるか」というお話でしたが、以前は技術や経験など、プロフェッショナルとしての評価が対価に結びついていたと思いますが、今ではそのバランスがずいぶん壊れてきたのかなという感じはします。安さだけを求められることが多くなりましたよね。

椎名:スタジオの料金もどんどん下がっていますし、ミュージシャンも演奏の対価はどんどん下がってきている。レコーディング業界を底上げするためには、こういった課題へ対応しなければいけません。そのヒントとして一つあげられるのが、日本の特殊性として、世界でパッケージが落ち込んでる中、日本はついにパッケージで世界一になった。やっぱり日本人はコレクションするのが好きなんだなと。本当に愛着を感じるものには物として持ちたいというのがあって、それが今後のヒントに繋がらないかなと思ったりもします。一曲気に入ったものを携帯端末でダウンロードして、カラオケで歌える程度に覚えたら後は消しちゃう、ということもありますが、気に入ったアーティストに対してはパッケージを買うという消費行動はまだ廃れていないと思うんです。

大野:使い捨てと言うと自分たちの首を締めてしまいますが、そのような流れが主流となってしまいました。デジタルの演奏は否定しないですけど、やはり、人間が演奏した気持ちのこもったプレイというのは聴いている人を熱くさせる、すごい力のあるものだと思うんですね。ですからrefの活動を通じてそういった音楽をどこかで発信していって、どんどん聴いてもらって、こんな素晴らしい音があるんだということを再認識してもらいたいですね。

内沼:制作費を抑えるために打ち込みがメインになる。それはレコーディングエンジニアにとっても非常にまずい状況なんですよ。昔は毎日、生演奏を録っていたような時代だったので必然的に上達していくと言うか、恵まれた環境だったんですけど、今の若いエンジニアたちは生演奏を録る機会がほとんどないですよね。優秀なレコーディングエンジニアを育てる。そしていい技術を継承していかないといけないんですけど、今はそれができない状況ですよね。将来的な話ですけど、refでそういった勉強会ができればと思います。

大野:演奏する若者たちには「どうしたら音楽でメシが食えるんだろう」と悩んでいる人はいっぱいいると思うんです、彼らに「プロはこういう場所で演奏しているんだ」という所を見せたり、自分がプロになっていった過程を話す場なんかを作っていければ、もっと貢献できるんじゃないかなと思います。

椎名:今はDAWで誰でもスタジオを作れるじゃないですか? 昔はマルチ買うのに何千万、コンソール買うのに何千万。でも今はMacとインターフェースとソフトウェアさえあればできるのでプロとアマのラインも不明確ですよね。

Musicman-NET:世界的に音楽を聴くスタイル自体が大きく変化してきていると思います。日本ではまだ、サブスクリプションやストリーミングが普及していない等の理由から、結果的にCD売上が世界一になっている。しかし、いつまでもそれらのサービスを拒否することはできないと思います。このような状況下で音楽制作のスタイルだけは従来通りのものを守っていこうとするのはなかなか難しいと思うのですが…。

椎名:CDの売り上げが世界一ってことは、それはそれで肯定的に考えたらいいと思うんですよ。一方で、もし守ろうという角度からの話があるとすれば、これは全世界的な課題ですけど、そういったサブスクリプションサービスやストリーミングのサービスで、音楽ビジネスの客単価がどんどん下がっていくという問題があります。インターネットのコンテンツに対してどう対価を払うのか? クリエーターや制作サイドにどう還元していくか?というところの議論はあると思いますね。refに直接関わることではないかもしれませんが、少なくともレコーディングに関わるステークホルダーとして、そういった問題も新しい状況への対応も含め、情報交換の場所を持ちながらやっていきましょうということですよね。座組みは座組みとしての良さがあって、先ほど話しに出たように新人発掘であったり、レコーディング技術の伝承であったり、今は必要とされないかもしれないけど、将来、無くなってはいけない技術もあると思うんですよ。だから何を作って、何を残してゆくのか?ということも、この場を使って議論できるんだと思います。

Musicman-NET:ただ、既に伝統的な録音技術云々に全くとらわれないと言うか、関心すらない若いクリエーターたちが台頭してきているのでは?

椎名:そうですね。でも流行り廃りってあるじゃないですか? 今はサンプリング音源が席巻していますけど、一方でストリングスの需要が上がってきている気もします。フィジカルミュージックが一回りして戻ってくる可能性も当然ながらあると思っています。また、今の若いクリエーターには、先達のミュージシャンに対するリスペクトがしっかりありますから、あまり悲観的には考えていません。refではそれぞれの地の利を生かして若いクリエーターにアプローチしていくことも大切だと思います。


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